ものっすごい遠いところから新参者が誰かを見つけたようです~月組『カンパニー』『BADDY』感想
月組の『カンパニー』『BADDY』を2回見ましたよ。
2つ前の記事にも書きましたけど、あらかじめ取っておいたチケットは1枚しかありませんでした。『ポーの一族』のことばかりが頭にあって月組のチケットを取るのを怠ったと書きましたが…
実はポスターを見てあまり興味をそそられなかった、というのもチケット取りをきちんとしなかった理由のひとつでありました。
だって、なんだかカオスだったから。
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珠城りょうさんのこのいでたちはもしかしてサラリーマンなの?
なんで後ろにバレリーナがいるの?
横の黒いふぁさふぁさしたものは何?
原作は伊吹有喜さんの小説ということですが、読んだことがないので内容は知りませんでした。未だに読んではいないですが、公演を観たあとであればこのポスターも納得です。実にわかりやすいポスター。そうだよねこうなるよね、と。
でもこれを初めて見たときは、サラリーマンとバレリーナが全然結びつかないし、黒いふぁさふぁさしたものがロットバルトだなんて思いもしないから頭の中にはてなマークがたくさん。
いや、そもそもロットバルト自体を知らなかった。白鳥の湖の話はなんとく知っているけど、オデットとジークフリートという名前しか記憶にない。黒いふぁさふぁさしたものがバレエダンサーなどと思うわけがない。完全に会社の余興でコスプレをさせられている、真ん中のサラリーマンの同僚だと思った。
…とポスターの印象を書いたけど、むしろカオスすぎて気になるべきだった。
これなんだかおもしろそう!て思えなかった私の感性の鈍感さ。
余談ですが興味本位でロットバルトを検索してみたらなんかすごいのが出てきたよ!
拾ったものなので画像悪いですけど。
これ本当にロットバルトなんでしょうか? ロットバルトで画像検索したら出てきたけど、実は全然違うものという可能性もなきにしもあらず。
でもこんなのが登場するなら、ロットバルト見たさにバレエの白鳥の湖に行ってみたいと思ってしまった。チケットは目が飛び出るほど高そう。誰かチケットください。
そんなわけで1枚しか取っていなかった月組ですが、すでに当日券で2回行ってしまいました。本来持っているチケットの日にちはまだ来ていない。
どうやらBADDYがすごいらしい、という噂を聞きつけて(ヅカ友などいないのであくまでもツイッター情報)見たくて見たくてしかたがなくなったんです。
そして当日券に手を出した。
1回目は日曜に初めて買った当日立見券。次が平日にぎりぎり買えたB席最後列。
当日券って本当にいっちばん上だから階段昇るのしんどい。日頃の運動不足がたたる。
下から見たら誰も人がいなかったから、まだ立見の人来てないのかなぁなんて思って上がったら、手すりの裏でみんな壁にもたれて床に座り込んでいた。正直ちょっとビビった。
立見でもいいから見に来ようとする人は昔からの宝塚ファンで「私しょっちゅう立見で来てますよ。だから慣れてます。開演前はこうやって床に座って待つんですよ。そんなの当たり前よ」みたいなオーラを出して悠然とかまえているような気がして一瞬だけひるんだ。新参者が立見なんか来てすみません、て。
そんなオーラ誰も出してないけど。
一応私も「立見初めてじゃありませんよ」顔をして座りましたけど。なめられちゃいかん!と思って。言っておくが、私のことなど誰も気にしていない。
でも立見は楽かもって思いました。狭い席の中ほどまで、すみませんすみません、って言って入っていかなくてもいいし、スポって自分の番号の位置にハマればいいだけ。
それにしてもやっぱり遠い。舞台の輝きよりも、天井のしょぼいライトの方が近い。
オペラグラスがなかったら油断した途端にこの劇場空間からこぼれ落ちそうな感じ。
でも1500円だから折り合いはつけられる。
『カンパニー』は話としては普通。つまらなくはないけど、めちゃくちゃ面白かった!というほどのものではない。小説の方はどうなんだろう? 面白いんでしょうか? 私は感受性皆無なので、この感想に異論は認めます…
でも京三紗さん演じる敷島瑞穂と、憧花ゆりのさん演じる田中乃亜のキャラが何気に面白くて好きです。ちょこちょこ入るツッコミとか、さらっとこぼす台詞が妙にじわじわきてくすっと笑ったり。
私は新参者なので当然月組を見るのは初めて。珠城りょうさんを見るのも初めてです。
『カンパニー』が開演し珠城りょうさんが出てきてセリフを発したとき「あっ」と思いました。あっ、この人の声が好きかも、と。歌声ではなくてしゃべる声が。
一応Youtubeで初日舞台映像(ロング)を見てはいたんですが、その時はそんなこと全く思わなかった。生で聞くと劇場に声がひびく感じなどで変わってくるのかな。
どういうところが好きかというと目に見えない「音」のことなので言葉にするのは難しいんですけど、一昔前のドラマに出てくる正義感溢れまくってる学級委員みたいな感じ?
まっすぐ真正面から突き刺さってくるけど、だからといって嫌な感じがしないというか。正論を投げかけられるから、めんどくせぇな、って思うけどでも心のどっかでは耳を貸してしまうというか。耳心地がよい。
あぁ、それはもしかしたら珠城りょうさんの声ではなくて、青柳誠二の声なのかもしれない。
それと珠城りょうさん、ガタイがいいですねぇ。私みたいな新参者は【宝塚の男役=男装の麗人】というイメージなんですけど、珠城さん、あれは完全に男だよ。最近の小奇麗で細身の若い男性にはない泥臭い感じの男らしさだよあれ。あくまで青柳誠二を演じてる珠城りょうさんの印象ですけど。
きっと、あの広い背中に世の女性はやられてしまうのでしょうな。
『BADDY』での愛希れいかさんとのデュエットダンスはバランスがいいし見てて安定感がある。きっとガタイがいいからだと思ってる。リフトもきれいで見応えあった。
炎の中でのダンスって情熱的ではあるけれどやっぱりどこかはかなげで、二人の激情がそこで一気に頂点に達して弾ける。散ってしまったものってすごく印象に残る。
目が離せなかったですよ。いや、オペラが手ばなせなかったですよ。
あー、あれ近くで見たいな。どうにかして近くで見れないもんかな。
でも私が1階席に降りられる予定は全くない。
美弥るりかさん。
珠城りょうさんとは正反対に、男役だけど細いから女性みたいですね。いや、女性なのだからこの言い方は妙というものか。高野悠という役が髪の長い役だから余計そう見える。美弥るりかさん、女性みたい。いや、女なんだが。
身長も男役さんとしてはそんなに高くないし、私と大して変わらないですし。
『BADDY』で男だか女だかわからないスイートハートを演じていましたが、まさにこれ、適役!
このスイートハートが登場するシーンが好きなんです。
バッディバッディ~からスイーハースイーハーってつながるところ。文字にすると途端に魅力半減。描写能力皆無なのでこれ以上の説明は無理。すぐにあきらめます。わからない人は今すぐ当日券かライビュのチケットを買ってください。
のちにスイートハートが女性の恰好して出てくるんですけど、単純でバカな私の脳内は混乱。男役の方が女性の恰好すると女装に見えてしまってしかたがないのです。男役=オトコって思ってるから。しかも美弥るりかさんっておめめぱっちりでどっちかと言えばはっきりとしたお顔立ちだから、とてもきれいなニュー〇ーフにしか見えない。
でもこんなニュー〇ーフならぜひともお付き合いしたい。選んでくれるかどうかは別として(ちなみに私は女だ…笑)。
完全にセクシーさがあふれ出ちゃってたよ。男役なのにこんなに女性の色気を出せる方が他にいるんでしょうか? いたらぜひとも教えてほしい。
きっと美弥るりかさんは、もともと色気のある人なんだろうな。
『BADDY』は音楽がすごくよい。
ストーリーの設定も初見ではなんだかよくわからなくて、目の前で展開されているわちゃわちゃを見るのが精いっぱいだったけど、2回目でなんとなく理解した。でもまだなんとなくだからあまり語れない。
ただ音楽は非常によい。
【悪い~こ~と~がした~い~】っていうあのカオスパラダイス?
あそこがすごく耳に残る。メロディーはわかりやすくて、歌詞は単純であからさますぎて、だからこそ直球で海馬の中にねじ込まれる感じ。
【悪いことがしたい】のあとに【いい子でいたい】って続くんですけど、これはまさに『BADDY』を見ている時の私の気持ち。
『BADDY』を見てるとノリのよい曲が多くて、立ち上がってリズムとって踊りだしたくなる。手拍子だけじゃ物足りない。普通のライブ会場みたいに立ち上がってこのメロディーとリズムを体で感じろ、観客どもよ!、と煽動したくなるけどそんなことできるわけがない。
ここは東京宝塚劇場。大人しく手拍子するしかないよね。係のお姉さんが来ておこられちゃう。周囲の人に変な目で見られちゃう。古参のおばさま方からは「なによあのみっともない子っ!」って苦い顔されちゃう。そもそもコミュ障な私がそんなことをするわけがない。いい子でいたい、というか、いるしかない。
宝塚では恒例のロケット。あれも『BADDY』では一味ちがった。怒りのロケットっていうらしい。普通のロケットでも揃った足あげを見ると毎回すげぇって感心するんですけど、『BADDY』のはすげぇどころか言葉を失う。
鬼気迫るとはこのこと。たぶん私は圧倒されて口をぽかんとあけた間抜け面で見ていたにちがいない。力強い歌とちょっとヒップホップ入ったようなダンス。なんだこれ、ここは宝塚じゃなかったのか? いったいどこのライブ会場だ?
やっぱり『BADDY』だけ、一度Zeppあたりでやりませんか?
まずい…。文章が終わらない。駄文垂れ流しすぎてる。あと少しだけにして終わろう。
月城かなとさん。
男役三番手らしいのでさすがの私もお顔とお名前ぐらいは知っておりました。
なんだろう、オペラ越しに初めてお顔を見たときの感動といったら。
まぶしい、まぶしすぎる。なぜ神様は人の造形に関してこうも格差を創ってしまったのかと。美しいは正義。いいもん見たありがとうって感じ。
顔と名前は知ってたけどしゃべっているところの記憶があまりありませんでした。初日映像見たにもかかわらず。実際舞台でセリフを口にしてるのを見て、けっこう太くて男らしい声を出すんですね、ってはっとさせられた。あまりにもきれいな顔だったから男役だってことを忘れかけてたよ。
はかなさが漂う美しさ。苦悩する青年役やったらすごいハマるだろうな。もうやってるかもしれない。端正な顔をした人が悩む姿は貴い。
日本青年館ホールの『LAST PARTY』見たかったですね。チケットないよ。
そんな月城かなとさんが『BADDY』でなんか知らないけどオマールの被り物かぶってたんですが。あの被り物、けっこうしっかり作ってある。オペラでガン見してしまった。オマールじゃなくてロブスターの方で確認したけど、けっこうツヤ感があってかたそう。そんなことはどうでもいい。
そんなこんなで今にも忘れ去られそうなくらい舞台から遠くはなれた立見から手すりにしがみつき、『BADDY』で大階段から降りてくる珠城りょうさん、美弥るりかさん、月城かなとさん三人をオペラの中にきれいに収まるようにして眺めながらニヤニヤしていたのはこの私である。
そして観劇2回目のB席最後列からは、そこに暁千星さんを加えてきれいなひし形をオペラの中に作りニヤニヤしていたのである。
どうやら私は見つけたようだ。
暁千星という存在を。