己の敵は己~私は『Killer Rouge』に参加できるのか?
月組『カンパニー』はまだ千秋楽を迎えていないし、次に観劇するのは宙組『天は赤い河のほとり』だというのに、私は星組の『Killer Rouge』のことで頭がいっぱいである。
『ANOTHER WORLD』ではなく『Killer Rouge』の方である。
なんとなく気づいていたのだけど、いや、もうあきらかにそうなのだけど、どうやらこの『Killer Rouge』、お客様参加型の演出らしい。
先日、宝塚公式ページに「お客様と出演者が主題歌にのって一緒にご参加いただける場面がございます」と出てしまったのだ。明記されてしまった。ご丁寧にレクチャー動画までついている。
う~ん。こういうのとても苦手。
決してお客様参加型の演出がダメなのではない。宝塚歌劇団様には何の落ち度もない。これはあくまでも私自身の問題である。
ただただ、恥ずかしいのだ。
こういった客も一緒になって盛り上がれる演出の方が楽しいだろうし、好きな人の方が多いのだろう。ただ、私は自意識過剰なコミュ障なのだ。ただのコミュ障ならまだしも「自意識過剰」だからたちが悪い。そしてけっこう冷めた人間でもある。
「オマエのことなど誰も気にしていない」
「客席の人たちはステージの上の人を見ているのだから誰もあんたのことなんて見ていない」
それはよくわかっているのだけど、ただ一人、私の事を見ている人間がいる。
そう、私自身だ。
自分には似合わないことを言ったりやったりする場面になると、急に第三者的に自分を見つめ始めてしまう。斜め上から俯瞰している自分がいる。客観視してしまう。
こんなことしている自分。
あんなことをやらされている自分。
実にめんどくさい人間である。
振りのレクチャーも『Killer Rouge』内に含まれているらしいから、その時点からきっと客観視が始まるんだろうなぁ。
ホントにめんどくさいヤツ。
でもスイッチを入れることは可能だ。「楽しんじゃえ」モードにスイッチをオンすればそこそこ針を振り切ってやれる自信はある。でもそのスイッチを入れるまでの道のりが容易ではない。
ポチっとボタンを押すようにスイッチが入るわけではなく、「はいスイッチ入れますよっ」と心に勢いをつけて、重いレバーを“ふがーっっ”と力いっぱい180度回して、持てる力すべてを出し切ってヘロヘロになったところでようやく「はいスイッチオン」と声をかけられる感じ。
呆れるくらいめんどくせー。
今のところチケットは1回分とってある。その日は2枚取ってあるので、まあいい。一人じゃないからまだスイッチを入れやすい環境にはある。入れるかどうかはわからないけれど。
問題はそれ以外である。基本的に舞台は2回見たいと思っているので、少なくともあと1回は行こうと思っている。あらかじめチケットを確保できればいいが、できなかった場合は当日券で。
いずれにしても一人で行く予定なのだ。自意識過剰なコミュ障が一人観劇で振りをスイッチオンしてできるわけがない。どうしよう。とても困っている。だからと言って何もしないで「すん」としているわけにもいかない。そっちの方が逆に目立つし、ハートが強くないとできない。それができるくらいの強靭な精神力があれば、こんなことで悩んだりしない。
だから私はここ最近『Killer Rouge』のことで頭がいっぱいなのである。
とりあえずレクチャー動画でも見てみよう。ちょっとした振りで簡単ならやれないことはない。案外気にするようなことではないかもしれぬ。私は恐々その動画を再生した。
そこで初めて天寿光希さんという方を知る。とても綺麗なお顔をしていた。だいぶ気になるな。私は節操ないので目にした綺麗なものはもれなく吸収します。もう覚えた。はい覚えた! それにこの髪の色いいね。私がやったら絶対似合わないし、ごく普通の社会人としてはアウトな色だと思うけど。
Wikipediaを見たら首席入団であった。デジャヴュ。Wikiを見て首席入団。ああそうだ、暁千星さんと同じだ。身長167cm。おお、私と同じである。勝手に親近感を抱いた。
まあ、天寿光希さんの話はどうでもいい。いや、どうでもよくはないけど。 とりあえず今はおいておこう。
【キラ、キララ、キラ、Killer Rouge】の部分で振りがあるらしい。そんなに難しくないかもしれない。このくらいならやれるんじゃないかと少し希望を持った。
そう思ったのも束の間、いざやってみると指を二本立てるあたりからどうも怪しい。ご親切に反転したバージョンでレクチャーしてくれているのに、やっぱり「指二本立て」あたりが、自分がやっているのと天寿光希さんがやっているのとで全く別物に見える。何が違うんだろうか? それに若干テンポについていけない。
何度か再生して一緒に振りを練習していた。
ふいに首の後ろあたりがひゅっとした。
ひええっ、こっぱずかしい!!!
ほんの一瞬、客観視してしまった。
気付けば時刻はもう夜中。車もあまり通らない静かな住宅街の一室で、ひとり動画を見ながら「キラキララ」とぼぞぼそ呟きながら手をひらひらとさせていた。
ひとりで何やってんだ私はあああああぁ!
油断した。うっかり俯瞰してしまった。
踊っている自分を客観視してはいけない。決して客観視してはならない。
もはや自分との闘いである。大袈裟。
こんな調子で観劇当日スイッチオンできるんだろうか。
まぁ意外とその場のノリでやれちゃう気もするけど。
レクチャー動画の最後に呼ばれて出てきた方々がなんだか濃いんだが…
自己紹介時の圧がしんどい(笑)
でもつい何度も見ちゃう。