初心者の覚え書き【宝塚】

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『ハンナのお花屋さん』感想~芹香斗亜さんのアベルしか見ていないが。

もうすぐ宙組公演が終わってしまいますね。

悲しい。

悲しいからブログ書きますね(なぜだ?)

 

 

以前、途中まで見てやめてしまった『ハンナのお花屋さん』。

ようやく最後まで見ました。

以前ふざけた記事を書いてしまったので、反省の意味も込めてきちんと書こうと。

 

言うまでもありませんがこの作品は芹香さんが宙組に組替えする前の、花組での最後の作品となります。

 

kageki.hankyu.co.jp

 

 

クリスとミアのただのラブストーリーだと思い込んで軽く見始めたのに、図らずも胸の奥にズズンと重くのしかかる物語でした。特にアベルに感情移入してしまうと、もう、しんどさがひどい。

とりあえず、先日なぜ途中でやめてしまったのかを検証しつつ見ることに。

前回チャレンジ(DVDを見るだけなのにチャレンジとは?)したときは、芹香さんが掘った穴に片足を突っ込んだ状態で見たから「無理無理」となったけど、さすがに10日経ってるし気持ちも落ち着いてきているし、冷静に見れるのではと思いました。きっと自分は芹香斗亜を過大評価しすぎているにちがいないと。

しかしそれは浅はかな考えであったことを、私はすぐに思い知るのです。

(私のありがちパターン)

 

開始早々、明日海さん演じるクリスの夢の中に出てくる芹香さん演じる父・アベル

腰に一瞬両手をそえるのだけど、それだけで「すばらしい!」「うわー、かっけぇ!」と声を上げてしまう。贔屓目がすぎるけれど、なんせ彼女の足が長いから両手の位置も高く、フォルムが非常に美しい。

こんな出だしのちょっとしたシーンでいちいち「はっ」とか「ひっ」とかつまずいてるんだから、そりゃ前回のチャレンジが志半ばで挫折したのも無理はない。

その後アベルはすぐに引っ込んでしまうので「お、おおぅ。う、うん。そうか」と伸ばしかけた手を引っ込めざるを得ない状態に。完全なお預け状態となります。しばらくアベルは出てきません。

 

アベルがいないと平穏な気持ちで見ることができます。落ち着いてストーリーに没頭できる。
天は赤い河のほとり』の時もそうでしたけど、芹香さんが出てくるとその姿や声の心地よさといった五感に訴えてくるものばかりに気を取られ、話の展開とかセリフ、歌詞の内容がまったく頭に入ってこなくなるんです。脳みそで観るんじゃなくて感覚で観てしまう。

もはや芝居を見るというより芹香さん観賞になってしまいます。これはできれば改善したいところ。DVDやブルーレイなら、ちょあれ何だっけ?と何度も戻って見ることができますが、実際の舞台ではそうはいかない。何度も観に行ければいいけど、チケットが取れなくて1回しか行けないということも大いにありますから。

芹香さんがトップになった時のことを考えると恐ろしいですね。

何回観に行っても「な~んも覚えてないっす」という由々しきアホ状態になる可能性が高い。

 

ハンナの話に戻りましょう。

この先アベルはホントに出てきません。音沙汰なしです。とんと出てきません。

あれ? この前見た時もこんなに出てこなかったっけ? と戸惑いました。同じものを見ているのでね、この前も今回も変わるわけがないんですけどね。

私はもしかして前回、あの冒頭のほんの数分の芹香さんだけで「無理無理」ってなってたんだろうか? だとしたら心臓弱すぎです。芹香耐性がなさすぎることに一抹の不安を覚えますね。

 
約40分後。
ようやくアベルぼっちゃんが登場します。

舞空瞳さん可愛すぎやしませんか? お人形さんみたい。ホントに可愛い。可愛すぎて「好き」とか軽々しく言えない。
あぁ、舞空瞳さんのことは、まぁいいいや。いや、よくないけど、今はまぁいいか。置いとこ。

お待ちかねのアベルぼっちゃんがいらしたぞい。

本当に足長いですわ。なんかさ、木とか継ぎ足してない? どっか比率狂ってない?って目をこすりたくなる。

気品のあるデンマーク貴族とな。

そりゃハンナだけじゃなくてたいていの人間はその洗練された姿に魅了されますね。10人いたら3人は特に興味を示さないにしても、4人は2度見して、2人は瞬間にハートを射抜かれ、1人はこじらせて闇落ち。

 

ハンナを見つけて「はあぁぁあっ♪」ってなってからのアベルは、もう(私が)ニヤニヤするしかない存在となり上がります。

ハンナに花をもらって「あの娘は?」と聞きに行く瞬間の「ちょ、ま、なにあの子すげぇ可愛いんだけど! 見つけたぜ! いやっほ~い!!」っていうあのキラキラした顔。あれがかなり良い。ホントに一瞬だけど、かなり良い。

その後の、鳩が豆鉄砲くらったような目をまん丸くした顔がなんだか癖になる。何度も見ちゃう。この流れ、何度も見てしまう。

たぶん私は、芹香さんの目の周辺の動きが好きなんだなぁと思う。眉間に皺を寄せる表情とか、困ってたり悲しんだりするときの目尻が下がる感じとか、細めたり丸くなったりする目とか。

 

こんなに突然 こんな奇跡が

思いがけず訪れた 運命の出会い

ラクル この世はミラク

こんなに突然 恋に落ちるとは

It's a Miracle

今まで出会った誰とも違う

彼女は奇跡 あの笑顔 心奪われ

止められない

 

 

歌詞違うかもしれんけど…

これを聞いた時、この歌詞そのままあんたに捧げるよ、と思ったよね。

芹香さん、キミだよキミ。

忘れもしない5月12日(土)、オイラはあんたにイッツアミラクルだったんだぜって。

 

ところでアベルがハンナに「僕はアベルアベル・ヨハンソン」と自己紹介した後に、ハンナが「ウッフフフ、アハハハハッ」ってキャッキャしながら笑って走っていくシーン。これ何回見ても笑ってしまうんですが、私だけでしょうか?

これ、ちょっと怖くないですか???

いやいや待てよ。こえーよ、ってなる。

それでもってアベルが「僕が何か?」って聞くんだけど。そりゃそうだよねぇ。疑問に思うよねぇ。自己紹介した途端、高笑いされて小走りされるんだから…。

下手したら失礼きわまりない人になるぜハンナ。

でもここまでの流れ、個人的にツボすぎるんです。

何回見ても「いやいやいや、それないわ、でも、ふふふっ」ってニコニコしてる私がいる。とっても好き。大好き。

 

まぁハンナもハンナなら、アベルアベルだけどな。

初対面なのに夢に出てきたとか、将来夫になる人なのとか告げられて「あっはははっ、ハンナっ!」て嬉しそうに受け入れるって、一目惚れが過ぎるぜアベル。普通ならひくよこれ。だって怖いもん。ホラーだよホラー。

うーん、いや待てよ。

リアルにいきなり芹香さんにこれ言われたら「あっはははっ、さやかっ!」って言って肩抱いて去るな、私も。間違いない。間違いない。全然ホラーじゃない。むしろファンタジーだ! ドリームだ!

まぁいい感じに肩に手回せないけどな。私が引きずられる感じになるけどな。6センチも身長差があるからな。いや、6センチくらいならどうにかなるか。

そんな話どうでもいい。

 

ここでまた一旦アベルさんとはお別れです。

私は前回、ここらへんで挫折したんだけれど、ホントに芹香耐性がないですね。アベルが出てくるシーンは2回しかなかったことが判明した。

でもちょっと見進めると、挫折した理由がもうひとつあったことを思い出しました。

高翔さん演じるアベルの弟エーリク、つまりクリスのおじさんがクリスの元を訪ねてくるシーン。

どうやらアベルは心臓が弱いらしい。先月心臓発作で倒れて、その前も何度かあったみたい。ああ、これ絶対死ぬやつじゃんと悟った。アベル死ぬのか。そうか…死ぬのか。

それに加えて、クリスはどうやら父親と断絶しているようだ。これは死に目に会えなくて後悔するパターンのやつじゃないのか? 意地張っちゃってさ、後悔するパターンなんじゃないの? 100%泣いちゃうやつじゃん、これ。

最初の夢のシーンであんなに幸せそうだったのに、いったい父子の間で何があったんだよ。せつねぇよ。素直になれよ。今すぐデンマークに帰ってやれよ。ホントは好きなんだろアベルのことが!

ああ、死ぬのかよ死ぬのかよアベル、って勝手に決めつけて見るのをやめたのでした。
見なければアベルずっと死なないからね。何だろうこの幼稚な発想は…。

 

結局、やっぱり死んじゃうんですけどね、アベル

でもクリスは最期にひと目会えたらしくて、心底よかったね、会えずに終わったわけじゃなくてよかったね、なんて思っていたけれど。

アベルがクリスの店から持って帰ったブーケを喜んでいたとか、店のブログを見るのをいつも楽しみにしていたとか、アベルの一番の願いはクリスが幸せでいてくれることだとか、そんなのセリフが次々に私の心をプスプスと刺しまくり、よくあるベタな展開なのにここで涙腺が崩壊しました。

年を重ねてきれいな銀髪となり、鼻の下におしゃれな髭をたくわえた老芹香アベル(老ってほどでもないだろうけど)を妄想し、クリスに遠ざけられながらも病床で彼の幸せをずっと願っていた、とか考えたらめちゃくちゃ泣けた。

 

ここから怒濤のように、アベルの真実が明かされていきます。

アベルに感情移入して見るから、けっこうしんどかった。

自分の判断で行ったことが、めぐりめぐって愛する人を失うことになるんですよ。

 

消えない罪 取り返しのつかない

失われた愛 失われた命

神の裁きか 愚かさの報いか

愛に背いた これが答えか

 

憎しみ故の悲劇 背負う十字架に

心は血を流し

愛は消え 世界は闇 

失われた愛 失われた命

永久に

 

ここを歌っているアベルを見て、何度再生を止めようと思ったことか。

これはつらすぎるし見てられないですよ。苦悩に心が殺されていってる。

「芹香さん渾身の歌」なんていう陳腐な表現もばかられるような、心震える絶唱でした。

つくづく生の舞台で観たかったなぁと思いました。

でも初見でこの場面に遭遇したら、きっと「びええェーピぇええ、ヒック」って号泣してそうだから、むしろ観なくてよかったかもしれない。周りのお客様のご迷惑になりますし。

 

アベル、こんなにしんどい役だと思わなかったですよ。

どんだけでかい悲しみを抱えて生きてきたんだよ。

自分の境遇のせいで手に入れられなかった幸せ、それどころか失ってしまった大きな愛。

 

あの時自分がああしていれば…

あの時彼にそうさせてあげていれば…

後悔ってのは自分に対しても、他人に対しても、ずっと消えないんですよね。

あぁ書いてて、また涙が出てきた。

 

大丈夫だよ。

ハンナもきっと幸せだったはずだから!

 

あぁ涙が止まらねぇよ、アベル

 

 

ラムセスみたいなチャラさのある役も好きだけど、こういう苦しみと悲しさをまとったノーブルな役もかなり素晴らしいですね。

むしろこっちの方が好きかもしれない。

 

芹香斗亜ばんざい!!

唐突に言いたくなる。

 

「はっはっはっ」と「かっかっかっ」が混ざったようなあの笑い方が好きです。

次は何を見ようかなぁ。

『MY HERO』見ても大丈夫かな。