男役さんの女役が突き刺さる~芹香Lafite-Rothschild斗亜と七海Mask of Rougeひろき
てっきり男役さんは男性しか演じないのだと思っていました。
女性の役なら娘役さんがいるし、宝塚を本格的に見始めるようになったのは『ポーの一族』からという新参の身としては、男役さんが女性を演じることがあるなんて想像すらしませんでした。
そんなにわか者がそのような場面に初めて直面してしまったのは、月組の『BADDY』でした。美弥るりかさん演じるスイートハートが、月城かなとさん演じるポッキーが女性の格好をしていたのです。だけどスイートハートもポッキーも男であるから彼らが女性の格好をしているというだけであって、正確には「女性」を演じているわけではありません。あれは女装です、女装。だからちょっとニューハーフっぽくないかい?と感じてしまったのは仕方がないことで、二人が本気を出したらきっと綺麗に仕上げてくるんだろうなとは思いました(いったい私は何目線なのか?)が、それほど私の心に突き刺さりはしませんでした。そもそもあの女装には、特にポッキーの女装には、誰かの性癖に矢を突き立てようなどという意図はないと思いますし。
いや、完全に矢が刺さった人もいるか。そりゃいるか。いるよな。
とはいえ月城さんは素材が良いだけにめちゃくちゃに可愛かったし、美弥さんも妖艶なフェロモンが溢れんばかりでしたから、けっこうオペラでロックオンしていたような記憶があります。
「それほど心に突き刺さりはしませんでした」などと涼しげに書いていますが、この時すでに【性癖に突き刺さる準備はできていた】のです。
私は芹香斗亜さんが好きなので、彼女が出演している過去のBDやDVDをちょこちょこ買って見始めていました。
芹香さんが登場する場面はもれなく何度も早戻ししながら見るので、いっこうに先に進まず、あのトンチキ邪馬台国ですらものすごい時間をかけてじっくりと鑑賞する始末でしたので、これじゃ時間がいくらあっても足りません。他にも見なくてはならないものがあります。だから『Santé!!』は途中で止めたりしないでとりあえず一回最後まで見ようと心に決めて見始めたのです。
ええ。
うすうすお気づきかもしれませんね。
そうです、そのとおりなのですよ。
『Santé!!』を再生した私は、開始1分少々で「ちょちょちょいいいいっ!!」と早戻ししたのです。
我が意志の恐ろしいほどの脆弱さを露呈した形になりますが、これはやむを得ないのです。
銀橋に男役スター芹香斗亜、柚香光、瀬戸かずや、鳳月杏、水美舞斗の5氏がずらりと並んでいます。
全員女性役なのです。男役を演じる女性たちが演じる女性たちです。なんだか「腹痛が痛い」みたいな感じになっている気がします。
歌い出しは2番手である我らが芹香斗亜。
その歌う姿を見たときの私の心のうちは…
例えるなら、ただひたすらに続く地平線を眺めているかのようでした。
なんだよそれ、とお思いでしょう。ええ、私もそう思います。
なんだよそれ。
正直わからないんですよ。あの感情が何なのか。
いったい目の前で何が起こっているのか瞬時に把握できなくて、心の機能が停止したにちがいなく、ひたすらに続いていく地平線をずっと眺めているしかないような、「無」に帰るしかなくてそれに抗うことなくおとなしく時が過ぎるのを待つような気持ち、というのが近いのかもしれないです。
いや。うーん、書いていてよくわからなくなってはいる。
とにかく男役というフィルターを通した【女芹香斗亜】がとてつもなく艶っぽくて、パチパチとまばたきをする様もやけに美しく、まぶたが開くごとにふぁあああと蝶が飛んでいくかのような優雅さなのです。その姿に私の目は釘づけとなりました。
本当に贔屓目が過ぎてしまうのはどうにも止められないのでそこは目を瞑っていただくしかないのだけど、とにかく女な芹香斗亜の美しさが衝撃的であいつは私の心にぶっすりと何かを突き刺して去って行きやがったのです。
もちろん他の4人の方々も綺麗なんですけど、特に瀬戸さんなんかは男役を極めてまくっているせいか、どうしても私の目は「男役」というフィルターというよりも「男」というフィルターを通してしまうので【この店で一番美しいニューハーフのママ】に見えてしまうのでした。
水美さんにしても体育会系の筋肉男子なイメージを勝手に持ってしまっているので、【最近この店に入った期待の新人ニューハーフ】になってしまうのです。
そのせいか見ていて恥ずかしいような、ちょっとむずがゆいような感覚に陥ってしまいました。
うわー、ごめんなさいっ!
全然悪気はないですし、なんならみなさん好きなんですよ、私はっ!!
でもそう思ってしまったんですごめんなさいすみませんどうもすみませんさーせん。
(書きながら思い出したのだけれど、私が最も初めに男役の女性役に出会ったのは2014年花組エリザベートのマデレーネでした。えええええって思ったことをすっかり忘れていました)
これを書きながらDVDを見直したのですが、初見の時よりもみなさんが女性に見えました。まぁ女性だけど。見ていて背中がむずがゆくなるようなこともなく、すっと入ってきました。目が慣れたのかなぁ。
柚香光さんも鳳月杏さんも女性に見える。いや女性なんだけど。
余談ですけど、最近鳳月杏さんのことが好きなんですよね。
芹香さんを好きになるのと似たような感じで好きになっている気がします。
とはいえですよ。やっぱり芹香斗亜さんが一番きれいだなと思うのです。
何が違うのかな。目線というか視線の動かし方が色っぽいのかな。
しなやかな動きが際立っているからかな。
それとも素材の問題なのかな。
わからん。
結局のところ、好きだから贔屓目で見ちゃって普段の男役とのギャップに萌えてしまうというごく単純で始原的な理由に落ち着くわけです。ただそれだけなんですよ、それだけ。想像もしていなかったからハッとしたんです。
しかしながら、好きだから贔屓目で見ちゃう事例ではないのにはっとさせられた方が現れてしまいました。
星組の七海ひろきさんでございます。
先日見に行った『Killer Rouge』の中で七海さんが演じていた怪盗Mask of Rouge。あれは一瞬にして私の心を奪っていったよね。
峰不二子感が200%以上。セクシーすぎてあれに降参しない人間がこの世に存在するんだろうかというくらいでした。まぁいるだろうけど。
私は七海さんに対して好きとかどうとかいう感情を持ったことはありません。
そこに全く他意はなくて、にわか者の私は星組に触れる機会があまりなく単純によく知らなかったというだけのことです。
よく知らないのにもかかわらず、Mask of Rougeを見たその後半日はずっと頭から姿が離れないという有様でした。
でもよく考えてみたら、七海さんの顔は本来私が好きそうな顔ですし、そんな人が「男役フィルターを通した女」を演じているのだから、矢が2乗にも3乗にもなって突き刺しにかかってくるのは当然の成り行きではありました。
ああ、ホントに綺麗だったなぁ、Mask of Rouge。
私は「男役のフィルターを通した女性」が相当に好きなことに気がついてしまいました。あくまでも「男役のフィルターを通す」のが重要であって、最初から女性を演じている娘役さんとは違う魅力がそこにはある。
「男役のフィルターを通す」ことが、私にとっては一種の媚薬のような働きをしているのだと思います。
といっても男役さんが女性を演じたからといって、その全てに骨抜きにされるわけではなくて、その違いは何だろうと考えたけれどよくわからない。
あれだな、しょせん顔が好きかどうかだけだろ、どうせな。
と元も子もない乱暴な結論づけをしたところでもう寝ます。
いいのかそれで?
あ、今度宙組の『WEST SIDE STORY』を見に行くんですけどね。
そこにもいらっしゃるじゃないですか。
「男役フィルターを通した女」を演じる方が。
そこにはハマる予感しかしなくて……夏。