初心者の覚え書き【宝塚】

宝塚についてたまに書くブログ

読んでも得るものは何もなし

好きなものから逃げた愚者

3月27日、ついにこれが出た。

 

月組 退団者のお知らせ】

 

待っていないようで待っていたこの一文。

待っていたようで待っていなかったこの一文。

 

私は恐る恐るそれを開いた。

ん?

ない。

もう一度よく見る。

ん?

やっぱりない。

 

おかしい。

本当はない方がよいのに、それがないことを不思議に思う自分がいた。

 

もしかして…

【退団者のお知らせ】を開く前に視界に入ったもうひとつの方に思い至る。

 

【組替え(異動)について】

 

なるほど、その線もあるかもしれないな。専科って書いてあるし。

少し安堵した。あぁ、そっちかと。それならまだ舞台上の彼女を見続けられる。

そう思いながらこちらを開いた。

 

あれ?

ない!

なんで?

なんでないの??

 

もはやそれを望んでいたかのような口ぶりであるが、決してそんなことはない。

再度言うが、本当はない方がよいのである。

 

 

辞めると思っていた。

ちなつさんは珠城さんと一緒に退団すると思っていた。

だってだってだって、フラグ立ちまくりだったじゃないですか。

雪組の彩凪さんが辞めるって出たときに、ちなつさんと同じような立場だし92期だしちなつさんも続いちゃうのかなとじわっと嫌な予感がよぎったし、そんななか珠城さんと『Eternita』と『幽霊刑事』に出るってなった時点で、退団はもう私の中では確定的になってしまった。

 

どこかから落下傘という話もあるけどきっと月城さんが次のトップになるだろうし、そうしたらやっぱり新生月組!って感じで中心的なメンツも変えたいのかなとか思っちゃうし、ちなつさんもそろそろ自分の次の人生考えたりするのかなとか勝手に妄想したりするし、でもちなつさんみたいに演技も歌もできる人って次の体制でも必要じゃね?とは思うけど、そんなことよりやっぱり本人の意思ってものもあるし、そろそろ次の人生をどうしようかとか考えたりするのかな……とかいろいろぐるぐるぐるぐる考えた末に、ちなつさんは次で辞めるんだってことにした。

私が私の中で勝手にそう決めた。

決めてやった。

 

だって、その方が楽じゃん。

ちなつは辞めねぇよ、何言ってんだよ、辞めるわけないじゃんかよぉ! 必要な人材なんだから辞めるわけないじゃん!!

って妄信して、ある日【退団者のお知らせ】にさらっと名前が載っていたら死ぬ。

そりゃもう、死ぬ。

見て見ぬふりしてきた自分を呪い散らかす。

 

2019年花組公演『CASANOVA』でべーちゃんが退団した。

唐突にべーちゃんの話。

彼女の退団が発表されたとき、私は想像以上にショックを受けた。

私が宝塚を見始めたのは2017年半ば頃で、いろいろなジェンヌさんたちを知るにしたがってべーちゃんは好きな娘役さんになっていた。べーちゃんだけでなく花組の上級生娘役さんはけっこう好きだったから、この時の発表はわりと私にダメージを与えた。

 

べーちゃんがやめちゃう…

 

この時私は当然の事実を思い出した。

そうか、自分が好きなジェンヌさんもいつかは辞めるんだよな。

それは当たり前のことだし、某アイドルグループのオタクをやっていた私は「推しの卒業」というものを過去に経験していたし、新陳代謝を繰り返さなければならない団体(とくに女子の)に所属する人間はいつかそこを出ていくとわかっていた。宝塚だって同じなんだってわかっていた。はずだった。

いつまでも同じ状態が続くわけがないと。

 

当時私はまだ宝塚を好きになって日が浅いから(今だって浅い部類だが)、人事的なことなんてよくわからないし、それ以前の人事とかよく知らない。こうなると辞めるパターンだとか、ああなると辞める傾向がある、とか知らんかった。今だってよくわからん。

そんなん自分の意思だろ、って思う。トップやトップ娘役、2番手はもはや自分の意思ではどうにもならないこともあるかもしれないけど、そうじゃなかったら自分のタイミングで辞める時期を決めるんじゃないかと思っている。とういうか、そうであって欲しいし、そうであるべき。 

 

今考えればべーちゃんが辞めるのはこのタイミングだったんだろうなぁと何となく理解できる。ここか、あるいは明日海さんと同時か。

(理解できると言ってもそれはただの私の想像にすぎない。真実なんてわからない)

でもそんなこと当時はわからんから、そろそろだろうなというファンとしての覚悟なんてものがあるはずもなく、永遠に楽しい時間が続くと壮大な勘違いをしていた私は、会に入っているわけでもない外野のただのエゴイスティックなファンでしかなく「なんでやめちゃうん? もっとべーちゃんを見たいよぉぉぉぉ。やめないでくれよおおお!」と駄々をこねたいくらいにただただショックでショックショックで仕事中なのに、しばしべーちゃんに思いをはせた。

好きが過ぎているときに唐突に突き付けられる現実ほど、心の臓をえぐってくるものはないのである。

 

あのショックをまた味わいたくない。

 

そんなわけで私はちなつさんは「辞めるんだ」ということに決めた。

勝手ながらそうさせていただいた。

ちなつさんは珠城さんと一緒に辞める。

月組の集合日、【退団者のお知らせ】にちなつさんの名前が載る。

私は遠くない未来に起きるであろう事実に向けて心のコンディションを整えることにした。退団者のお知らせを見る自分をイメトレしていた。

お知らせを見て「うん、知ってた」って平静を装うことができるように。

 

…と、ここまでは割とありがちな話だと思う。

覚悟することでその日が来た時にショックを和らげることができる(本当は和らげることなんてできっこないのだけど)というのは、まぁよくある話だし、そんなこと誰でもわかっているし、私に言われなくても実行しているなんて腐るほどいるだろう。

 

 

しかし私という人間は少し頭がおかしいのかもしれん。

私はそんなつもりは微塵もないのだけれど。 

 

劇団からいなくなるかもしれん、と思った私は覚悟をしたうえで逃げた。

辞めるものだと決めつけて覚悟をしておくだけでなく、逃げた。

 

ちなつからの逃走

 

「逃げる」ってなんだよと思われるかもしれん。

 

別に私はちなつさんの知り合いでもないし、そばにいる人間でもないので『逃げる』という言葉遣いはおかしい。

会に入っているわけでもないからそれを辞めるとかいう話でもない。

 妄想の中で何か設定していて、その世界の私がちなつさんから逃げる、というのでもない。そんなやべーヤツでは決してない、と思う。いや、むしろそちらの方がまだ理解されるのかもしれない。

 

私が言う「逃げる」というのは単純なことで…

 

 

ちなつを見るのをやめた

 

 

ただそれだけ。

たったそれだけです。

大層な前振りをしたような気がするがただそれだけ。

見ないようにした。

 

 

この道をまっすぐ歩いて行くとね、そこには悲しみの国からやってきた大魔王が立ちふさがっているんだよ。

その大魔王はこれから私の大好きなものを奪っていくらしいんだ。

ほら、遠くにうっすらと見えるよ。

大魔王は私の好きなものに背後から近寄って肩に手をかけようとしている。

どうする?

このまま突き進んでそれが奪われていくのをしっかりと見届ける?

大魔王はいとも簡単に奪い去っていくよ。

それとも何事もなかったようにわき道を行く?

大好きなものをもう見ることはできないけど、奪われる瞬間を目にしなくても済む。

悲しみは少し和らぐかもしれないよ。

 

 

見ると好きな感情というのは持続するのです。

5分でも10分でも姿を見ると持続するじゃないですか。

単純接触効果ってやつ。あれですよ。

単純接触効果 - Wikipedia

その逆をやったらいいやん、と単細胞な私は考えたのでした。

アホの極み極み極美慎。

しかももはやちなつは退団してしまってもういないんだくらいに思い込もうとしていて、アホな人間って暴走すると怖いわ~と今の私は笑うことができます。ふふふ。

そんなヤツいる?嘘くせぇと思う方がいても、それは当然の反応です。

安心してください。

3月27日を過ぎた今の私自身もそんな人間いる?嘘くせぇ、話盛ってねぇか? 盛ってるだろ? って思いますから。

 

とにかく私は見るのをやめました。

 

珠城さんが退団するからかスカイステージでは月組をたくさん放送していた。

過去の新人公演も放送している。

鳳月杏で検索するとたくさん出てくる。

やめれと思う。

(検索してる時点で逃げれてない説①)

見ちゃうじゃん。

しかし我慢。見ないからな。その手には乗らねぇからな。なんの手? 誰だよ?

 

過去に録画した公演も見直すなんてことは絶対にしません。

出島小宇宙戦争なんてもってのほか。

 

『Eternita』ってなにそれ? おいしいの? で過ごす。

だが録画されたタカニュでの何かは見ていないが保存してある。

『幽霊刑事』ってなにそれ? おいしいの? で過ごす。

だが録画されたタカニュの何かは見ていないが保存してある。

(録画してる時点で逃げれてない説②)

 

幸いなことに、年明けは宙組が東京で公演していましたから、私はすっかりキキモードになっておりました。この断食のような【断ちな】の苦行はキキちゃんのおかげでわりと和らげられたのでした。危機を救うキキ。

 

こう書くと案外薄情なんだな、私って。

キキちゃんがいればいいのかよ。

いいんだよ。

東にキキちゃんがいればキキに思いをはせ、東にちなつさんがいればちなつを思慕するんだよ。

(あぁ、この二人がいなくなったら私はどうしたらいいんだろうか。そう遠くはない未来を想像して身もだえする)

 

とりあえずそんな感じで逃走していた私に大きな難関がたちふさがる。

 

『幽霊刑事』のライブ配信 

 

 実は少し初日映像を見てしまった。

つ、つい出来心で…

(もはや全然逃げられてない説③)

 

こ、これは面白そう。ちなつさんが、面白そう……

このちなつさんを見たい。

ど、うしよう、ち、なつ、さんを、私に、、、

 

 

『Eternita』の時は配信の日、国際フォーラムの花組公演を見に行っていたので見ることができなかった。ちょうどよく見ることができなかった。 

だが3月20日は何も予定がない。

どうする?(どうするも何も逃走してるんだろ? 考える必要はないはずでは?)

 

迷ったあげく、私は見ないことにした。

ちなつさんを見たい欲求に打ち克ったのです!

 

 

ちなつとの闘争

ちなつからの逃走

 

 

そうやってじわじわとちなつさんから離れる計画を着々と遂行していたアホな私。

しかし『幽霊刑事』千秋楽後、ナウオンを録画し損ねたことに気づき地団駄を踏んだ。

(地団駄を踏んでいる時点で、もう全然逃げられてない説濃厚④)

もはや破綻している。

逃げることにしたんじゃねぇの? 

「ちなつとの闘争」とか「ちなつからの逃走」とか、下手くそなキャッチコピーみたいな感じで言ってるけど全然逃げれてないよね、オマエ。

 

 

そんな謎の行動をしていた私。

あの日を忘れない。

決して忘れない。

 

3月27日を忘れない

 

 

ちなつさんが辞めないことを知り数分後思った。

 

 

 

『幽霊刑事』見ればよかったああああああああぜぇあああぁぁぁぁああうぅ!!!!

 

 

 

 

時間を返せ。

アホなことをやり始めた過去の私よ、時間を返せ。 

 

おぉ~ろぉ~かぁ~もぉ~のぉよ

 

どこからかそんな歌が流れてくる。

 

ひとり相撲が過ぎた。

ひとり遊びは好きです。 

こんなこと書いてるけれど、私はわりとまともです。

 

 

 

 

いつまでもあると思うな親と金と推し

 

 

ちなつさんはまだ宝塚にいた方がいい。

誰がどう見たって必要な人材です。

ひとり相撲して同じところをぐるぐる回って周りが見えていないこんなアホだってそう思う。

 

 

「もう、二度とおまえを離さないぜぃ

一秒でも長くおまえを見ていたいからぁ~」

 

そんな歌詞の曲がありそうな気がする。

ないけど。

 

好きなものは飽きるほど見るのがよい。

飽きることなんてないのだよ。

いつまで見ることができるのかわからないなら、なおさら。

 

 

本当にその時が来たとき後悔しないように生きようね。